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早大に「村上春樹ライブラリー」 村上さんの寄贈きっかけに「語らいの場」創出

記者会見を行った十重田裕一国際文学館長、早大の田中愛治総長、村上春樹さん、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長、建築家・早稲田大学特命教授の隈研吾さん(左から)

記者会見を行った十重田裕一国際文学館長、早大の田中愛治総長、村上春樹さん、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長、建築家・早稲田大学特命教授の隈研吾さん(左から)

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 作家・村上春樹さんの寄贈資料などを収める「早稲田大学国際文学館(通称=村上春樹ライブラリー)」が10月1日、早稲田大学早稲田キャンパスに(新宿区戸塚町1)オープンする。

「早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)」の象徴となっている「階段本棚」 その1

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 早大では2018(平成30)年、村上さんから寄贈・寄託された書籍や直筆原稿、レコードコレクションなどを基に、作品のアーカイブと研究の場を作る「村上春樹ライブラリー構想」を発表。翌年、具体的な取り組みとして「早稲田大学国際文学館」設置を発表し、早稲田キャンパス4号館の改修に着手。開館準備を進めてきた。

 設計は建築家で早大特命教授の隈研吾さん。早大卒でファーストリテイリング会長兼社長の柳井正さんが建築費用約12億円を寄付した。今年4月に開館予定だったが新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期となり、10月1日の開館にこぎ着けた。

 「早稲田大学国際文学館」は、村上さんも学生時代に通ったという「早稲田大学坪内博士記念演劇博物館(通称=エンパク)」の隣に建設。地下1階、地上5階、約2100平方メートル。地下には学生が運営するカフェ「オレンジキャット」、ラウンジ、「村上さんの書斎」、1階は受付、村上さんの自室のサウンド・エッセンスを伝えるオーディオルームを設置する。

 地下1階から1階には、同館の象徴ともいえる「階段本棚」を設置。階段の左右にある本棚には村上春樹作品からつながったり、広がったりする書籍を陳列。期間によりテーマを設定し、入れ替えを行う。2階には、企画展を行う展示室、ワークショップや音響設備のラボ/スタジオを用意する。

 3階と4階は研究エリアとなり、研究書庫、閉架書庫、研究室、5階は事務所、館長室となる。3階以上は研究施設のため一般非公開。

 田中総長は「多くの作品の著作などを寄託・寄贈いただくなど、村上さんにお力添えをいただき、国際文学館を立ち上げることになった。隈さん、柳井さんのお力もいただいた国際文学館開館により、早稲田の地から世界に文学と文化の発信を行いたい。世界中から若い方が集まり、文化、文学の交流の拠点となることを願っている」と話す。

 柳井さんは「日本の文化の発信力が弱くなっていることをこれまでも危惧してきた。国際文学交流の場であるこのライブラリーが日本と世界の人々が一緒になって新しい文学を創り、文学だけでなく日本の新しい文化を発信する施設になってほしい」と話す。

 隈さんは「設計に当たり、日常から突然違う世界へ入ってしまう、ある扉を開くとそこに違う時間が流れる、そのような村上文学の要素を取り入れようと意識した。世界に例がないライブラリーになると思うので、全く今までの文学の世界とは違う新しい交流ができると願っている」と話す。

 村上さんは「私の学生時代、52年前は学生闘争の最中で4号館は学生が占拠していた場所だった。地下ホールで山下洋輔さんがフリージャズのコンサートをした際、友人が参加していたりしていた。そういう場所を使わせてもらえることになった事や柳井さんが同期入学だということに縁を感じる」と話す。

 「早稲田大学の『新しい文化の発信基地』になるとともに、学生が自由にアイデアを出し合って、具体的に立ち上げていけるような場所になれば。大学の中における自由で独特でフレキシブルなスポットになることを期待したい」とも。「早稲田大学は都会の中心にあり、自由に出入りできる場所にある。地の利を生かして大学と外の世界が交流できるようになってほしい」と期待を込める。

 開館時間は10時~17時。入館無料。一般入館は当面の間、新型コロナウイルス感染症対策のため公式サイトからの事前予約が必要。

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