
小滝橋交差点にビストロ「TABI & DINING ROUTE ZERO」(新宿区高田馬場3)が9月27日、閉店した。
最終営業日を切り盛りしたメンバー=小滝橋のビストロ「TABI & DINING ROUTE ZERO」が閉店
「船長(キャプテン)」として店に立ってきた店主の北中知己さん。銀座コリドー通りの飲食店でマネジャー職を務めた後、約400日の世界一周旅行を経験し、2017(平成29)年に銀座で「旅×DINING ROUTE ZERO」を始めた。都心の企業に勤める若者から支持を得ていたが、コロナ禍で深刻な影響を受け、状況を打開するため2020年11月に新宿駅東南口に移転。その後、近くに住む人に来てもらえるような地域密着の店にするため、2022年11月に現在の場所に再移転した。
近隣3つの駅からいずれも徒歩15分の立地ということもあり、銀座や新宿時代の客の来店もあったが、客の7、8割は近隣の人だったという。世界一周旅行をした北中さんを慕う外国人の客が多いことも特徴だった。北中さんは「外国人のお客さんが友達と一緒に来てくれて、たまり場のような感じになっていた」と話す。
閉店は契約期間満了に伴うもの。最終営業日には120人を超える客が来店した。地元出身の常連客は「ここで知り合いになれた友達の輪が広がるのが楽しくて、生活が潤った。いろいろな人が来ていて、いつも北中さんが紹介してくれるので、すてきな時間を過ごすことができた」と話す。
米国人の客は「店頭の看板にあったジャークチキンが気になって店に来るようになった。本当に寂しくなるが、店を移転して、再オープンしてくれたら、絶対付いていく」と話す。中国人の客は「この店で常連やスタッフにたくさん友達ができた。閉店はとても悲しい。一切の偏見がなく、一人の人間として接してもらえたのがうれしかった」と話す。
北中さんは高田馬場戸塚料飲組合(高田馬場コネクション、通称ババコネ)の広報部長も務めている。来街者が少ない街という課題感から「街の地域活性化」を目的に、加盟店同士が協力してイベントに取り組んできた。同組合は行政の補助金がイベントに交付される対象ではなかったため、北中さんが企業協賛を取り付けるなどして、切り盛りしてきた。
最終営業を終え、北中さんは「海外のお客さんにとっては一生に一度の思い出になると思い、一緒に花見をしたり、地元のお祭りに参加したり、スノーボードや音楽イベントに行ったりもして、楽しい時間を過ごせた。ババコネの活動も道半ばで閉店することになってしまったので、また高田馬場周辺で新しい店を出せるように頑張っていければ」と意気込む。