アダチ伝統木版画技術保存財団(新宿区下落合3、TEL 03-3951-1267)が現在、「復刻版で体感! 歌麿・写楽のキラキラの魅力」を開いている。
同財団は、江戸時代の浮世絵の制作技術を持つ版元、アダチ版画研究所が伝統木版画技術を次世代に継承し、広く国内外に紹介することを使命として1994(平成6)年に設立。「伝統木版画の制作技術に関する研究などの奨励と保存」「技術者の擁護育成」「普及」「日本の美術文化の発展」を目的として活動する。同展はアダチ版画研究所との共催。
江戸時代の版元、蔦屋重三郎を主人公とするNHK大河ドラマ「べらぼう」の撮影では、アダチ版画研究所と共に当時の浮世絵の色の監修や復刻版浮世絵の提供、版画制作のシーンでのエキストラ出演などの撮影協力を行っている。
同展では、現代の職人たちが復刻した浮世絵版画約20点ほか、版木や道具による木版制作に関連する資料を展示し、作り手たちの創意と工夫を読み解く。
特に、蔦屋が手がけた喜多川歌麿の美人画や東洲斎写楽の役者絵に使われた光沢感のある「雲母(きら)」を使った背景は、その技法の伝承がない中、同研究所の創始者が試行錯誤を繰り返し蔦屋版作品とほぼ同じ効果を生み出すことに成功したものとしてフォーカスする。
同財団の中山浩子理事長は「『べらぼう』を通して浮世絵、特に版元への興味関心が高まり、当ギャラリーへの来場者も増えた。表に出ることのない彫師、摺(す)り師が持つ技術力、当時の人が手に取って楽しんだ浮世絵と同じ鮮やかさや質感を感じてもらえる制作工房ならではの展示を楽しんでもらいたい」と話す。
「技術は人から人にしか伝わっていかない。若い人にマニュアルでは伝わらない技術をつないでいきたい。年に2回、研修生を募集しているので、この機会に問い合わせてほしい」と呼びかける。
会期中、会場スタッフが4日間・計6回のギャラリートークを行う。アダチ版画研究所が復刻し、大河ドラマの撮影で使われた歌麿の美人画の版木を公開する。
開館時間は10時~18時(土曜は17時まで)。日曜・月曜・祝日休館。入場無料。11月15日まで。