早大西門体育館通り商店会の「三品食堂」(新宿区西早稲田1)が11月25日、開業60周年を記念した冊子「青春の足跡60」や記念グッズの販売を始めた。
同店は、店主の北上昌夫さんの父・進一さんが、戦後間もなく早大高等学院(現早大戸山キャンパス)正門横に「角帽」と呼ばれる早大の制帽の製造販売を中心とする帽子店「早高堂」を開いたことに始まる。区画整理により1958(昭和33)年に現在の場所に移転。その後、学生服や学帽を着用する学生が減り、1965(昭和40)年、母きよ子さんが帽子店を改装して飲食店を開く。「学生街だから若者が喜ぶものを」という発想から、牛めし、カレー、豚カツの3品を提供し、店名も「三品食堂」とした。
人気メニューの一つ「カツ牛めし」は、常連の学生から「豚カツの上に牛めしの汁をかけてほしい」と言われたことをきっかけにメニュー化。「赤」と呼ばれる特大の大盛りは、「大盛りよりももっとたくさん盛ってほしい」と言われ、店にあった一番大きな赤い丼で提供したことがきっかけで始まった。「カツ牛めし」にカレーをかける「カツミックス」も同様にして定番化したという。北上さんは「学生の希望に応えて母が裏メニューとして提供してきたものが定着して今の定番メニューが出来上がっている」と振り返る。
北上さんは大学卒業後、鉄鋼メーカーに就職。20年ほど勤めた後、両親の高齢化や店の今後を考え「早稲田の卒業生が来ると立ち寄る店がなくなるのは寂しいだろう。三品をつぶすわけにはいかない」と、1990(平成2)年に退職して食堂を継いだ。
「携帯電話がない時代は、大学周辺の飲食店が連絡所のような機能を果たしていた」と北上さん。その時代はグランドホッケー部の部員が多く通っていたといい、現在も剣道部員が皿洗いを手伝ったり、応援部が年末に「三品納会」開いたりなど運動部などとのつながりは強い。
50周年には、帽子店からの歴史と、店の顔とも言える歴代卒業生の寄せ書きなどの写真を掲載した三品食堂創立50周年記念誌「青春の足跡2015」を発行。60年記念誌(1,000円)はその後の10年の記録を追記して「青春の足跡60~三品60年の思い出~」とした。「寄せ書きや学生との記念写真には、あえてキャプションを載せていない、記念誌をめくって懐かしい顔を見つけてもらえれば」と北上さん。その他、記念品としてマグカップ(2,500円)、Tシャツ(2,800円)を用意。来店者には記念のハンドタオル(800枚限定)を贈呈する。
早大周辺7商店会と早稲田古書店街連合会から成る早稲田大学周辺商店連合会の会長も務める北上さんは「体力的に厳しいと思うこともあるが、70歳を過ぎても働ける場所があること、毎日若い人たちとのコミュニケーションがあることは本当にありがたい。ただ、学生だけに頼るのではなく、地域の人や観光客にも来てもらえる店や街を考えていきたい。気持ちは70周年に向かっている」と笑顔を見せる。