早稲田大学演劇博物館(新宿区西早稲田1)が現在、2024年度秋季企画展「築地小劇場100年-新劇の20世紀-」を行っている。
新劇は、商業演劇が中心だった歌舞伎などの旧劇や新派に対して明治末に西欧の影響を受けて生まれた演劇ジャンルで、同館創設者の坪内逍遙らを中心とする文芸協会の新劇運動から始まる。大正期には時代の最先端の演劇となり戦後に黄金時代を迎える。
築地小劇場は、1924(大正13)年6月に誕生した新劇初の本格的な常設の専用劇場であり、同劇場専属の劇団名。築地小劇場からは、戦前から戦後の演劇界を支えた俳優や劇作家、スタッフなど多くの人材も輩出された。また新劇は、演劇のみならず文学・芸術・音楽・出版・放送などさまざまな文化領域と関わりを持つ。同展では、新劇の20世紀を考える契機にと、築地小劇場創設100年に当たる記念の年に、所蔵の関連資料約300点を展示する。
展示は「第1章 築地小劇場まで」「第2章 築地小劇場とその時代」「第3章 築地小劇場から」の3章構成。
第2章では、築地小劇場の模型のほか、当時の照明や音響の効果を作り出すクッペル・ホリゾントと呼ばれる湾曲したコンクリートの壁やプロンプター・ボックスなど舞台機構を再現した模型の中で、当時の上演作品を映像で流すなど、築地小劇場の様子を再現する。
企画を担当した同館助手の熊谷知子さんは「築地小劇場演目で上演された演目は、その後も他劇団で上演されるなど大きな影響を与えた。第2章では、その魅力はどこにあったのかを感じてほしい。当館ならではの企画、クッペル・ホリゾントの再現も楽しんでもらいたい」と話す。
第3章の冒頭では「新劇の20世紀」として文芸協会、自由劇場、東京俳優学校から築地小劇場をたどり現在に至る新劇の系譜を劇団名や俳優名などで示すパネルも展示する。
10月11日に開催した「築地小劇場100年と文学座-文学座「摂」上演にちなんで-」に続き、俳優座、劇団民藝の3劇団に関する関連イベントを企画するほか、11月には同名の関連書籍も刊行する。
学芸員の佐久間慧さんは「当時の前衛的な雰囲気が伝わり今見ても新鮮に感じる築地小劇場の公演ポスター、また杉村春子『女の一生』800回記念としてファンから贈られたキユーピー人形など、見てもらう機会の少ない当館所蔵の新劇俳優ゆかりの品もこの機会に見ていただければ」と呼びかける。
開館時間は10時~17時(火曜・金曜は19時まで)。入館無料。来年1月19日まで。