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漱石山房記念館で小説「道草」草稿を展示 漱石の推敲たどる

「漱石のミチクサ」を担当した「漱石山房記念館」学芸員の鈴木希帆さん

「漱石のミチクサ」を担当した「漱石山房記念館」学芸員の鈴木希帆さん

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 明治の文豪、夏目漱石の住居跡地に新宿区が設置した漱石山房記念館(新宿区早稲田南町7、TEL 03-3205-0209)で現在、所蔵資料展「漱石のミチクサ ―『道草』草稿を中心に―」が開催されている。

大胆なインクの染みや推敲の跡がうかがえる「草枕」の草稿

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 「道草」は、漱石の実体験を題材にした小説で、1915(大正4)年6月~9月に東京と大阪の朝日新聞に掲載された。

 草稿は当時、漱石が愛用した「漱石山房原稿用箋」と呼ばれる特注の原稿用紙に書かれている。漱石の著書の装丁も手がけた橋口五葉のデザインで、左右の竜の頭の間に篆書(てんしょ)体で「漱石山房」の文字を配し、マス目は発注当時の「朝日新聞」新聞小説の文字組みに合わせ1行19字詰め。

 内田百けん(門構えに月)など門下生3人が漱石から直接譲り受け、希望者に割愛された。現在、245枚が確認されており、同館は「東京朝日新聞」連載全102回のうちの12回分を所蔵している。「道草」以前の小説や小品の書きつぶし原稿は確認されておらず、漱石の推敲(すいこう)過程を知る貴重な資料という。

 第1章「あらすじと登場人物」では、漱石を中心とした夏目家の家系図に小説の登場人物を落とし込んだ相関図などで、「道草」の自伝的要素を伝える。第2章「草稿を読む」では、直筆の草稿、日本近代文学館が所蔵する入稿された「定稿」、「朝日新聞小説欄」のパネルを比較できる形で展示することで、執筆の過程を丁寧にたどる。

 同展を担当した学芸員の鈴木希帆さんは「定稿とのわずかな表現の差異の比較はもちろん、余白に残る故意に散らしたようなインクの染みや走り書きの英単語など、原稿用紙を前に書き渋る漱石をほうふつとさせ実にスリリングで興味深い。まさにこの地で、この原稿が書かれたという臨場感も味わってもらえる貴重な機会。多くの方に体験してもらいたい」と呼びかける。

 5月29日、6月12日は、鈴木さんが見どころを解説するギャラリートークを行う。

 開館時間は10時~18時(入館は17時30分まで)。月曜休館。観覧料は、一般=300円、小・中学生=100円。7月3日まで。直筆草稿は53枚を前期、後期で複製と入れ替えて展示する。

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