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早稲田大学演劇博物館で「松岡和子とシェイクスピア劇翻訳」展 戯曲全訳を記念して

松岡和子さんと早稲田大学演劇博物館助教 石渕理恵子さん

松岡和子さんと早稲田大学演劇博物館助教 石渕理恵子さん

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 早稲田大学演劇博物館(新宿区西早稲田1)が現在、翻訳家・演劇評論家の松岡和子さんが、シェークスピアの戯曲37作品を完訳した記念の特別展「Words, words, words.-松岡和子とシェイクスピア劇翻訳」を開いている。

「Words, words, words.-松岡和子とシェイクスピア劇翻訳」展示の様子1

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 松岡さんは、1993(平成5)年の「間違いの喜劇」から28年をかけ2020年12月に「終わりよければすべてよし」を訳し終え、シェークスピア37戯曲を完訳した。シェークスピア劇全作品の翻訳は、坪内逍遙、小田島雄志さんに続く3人目となる。ちくま文庫「シェイクスピア全集」の表紙は、松岡さん自身が安野光雄さんに依頼したという。

 当初は完訳の意識はなく、1998(平成10)年に「彩の国シェイクスピア・シリーズ」で、シェークスピア作品の完全上演を目指す蜷川幸雄芸術監督から「松岡さんの訳でやるからね」と声をかけられて以来、自覚的に取り組んだという。

 特別展では、松岡さんがシェークスピアの言葉と向き合ってきた日々の軌跡を、直筆翻訳ノート、翻訳原稿、上演台本などを通してたどる。ゆかりの深い演出家や俳優とのエピソードも舞台写真やチラシ、ポスターと共に紹介する。松岡さんが特に大切にする「夏の夜の夢」上演台本(ジョン・ケアードさん演出、新国立劇場、2007)も初公開する。

 同展を担当した石渕理恵子助教は「松岡さんは50代で全戯曲の訳を引き受け、それを完結された。女性の生き方としても素晴らしいと感じる。本展は長年上演にも関わってきた松岡さんから多くの貴重な資料をお借りすることができ充実した展示となった」と話す。

 関連イベントとして、10月17日に行われた公演「ページとステージ行ったり来たり -シェイクスピア劇全37作品の翻訳を終えて」では、松岡さんが、他の翻訳者や自身の翻訳を比較しながらシェークスピア戯曲の翻訳に関する推敲(すいこう)について、また完訳のきっかけになった蜷川さんとのエピソードなどを披露。翻訳だけでなく、翻訳者として舞台作品の上演に関わり続けた松岡さんならではの話題提供となった。

 松岡さんは「シェークスピアの戯曲の中心にあるのは人間。人間の基本的な行動は変わらない。だからどんなに時代が変化しても、それに対応する力を持っている。普遍性の道はシェークスピアが付けてくれている。何から読めばいいかと聞かれれば悲劇性と喜劇性の両面を持つ『ロミオとジュリエット』を薦めたい」と話す。

 11月18日は、リーディング公演「今を生きるシェイクスピア -第7世代実験室 in Enpaku」を上演。松岡さんも特別ゲストとして登壇する。

 開館時間は10時~17時(火曜・金曜は19時まで)。入館無料。2023年1月22日まで。

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