
早稲田大学演劇博物館(新宿区西早稲田1)の野外舞台で、シェイクスピアシアタ-が9月26日、シェークスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」を上演した。
上演の様子 バルコニーの場面1=早大演劇博物館でロミオとジュリエット
同館は、1928(昭和3)年10月、坪内逍遙の古希と「シェークスピヤ全集」全40巻の翻訳完成を記念して建立。逍遙の発案で、16世紀英国の劇場「フォーチュン座」を模して設計された建物の正面は野外舞台となっている。
シェイクスピアシアターは、演出家の出口典雄さんが1975(昭和50)年5月にシェークスピアの全作品37作の上演を目指して旗揚げし、1981(昭和56)年にこれを達成。1つの劇団による全作品上演は世界初という。舞台装置をほとんど使わず、ジーンズやTシャツなど現代的な衣装で、小田島雄志訳の戯曲に忠実に演じる。
2020年12月の出口さん急逝後、高山健太さんを代表とする新体制がスタート。本公演は、創立50周年を迎える同劇団2巡目の37作品上演の第1弾として開催した。
同館で広報を担当する前田武さんは「昨年度の『ペリクリーズ』上演を期に、今回『ロミオとジュリエット』を上演いただけたことは、シェークスピア全作品を翻訳刊行した坪内逍遙が創設した当館として非常に価値のあること。当館の前舞台で、2階のバルコニーを使用した上演は記録上初めてのことで、その意味でも当館として記念すべき公演になった」と話す。
高山さんは「前回の公演で、この舞台でいろいろな表現ができると確信した。劇団が大切にしている『声』の通りや響きも素晴らしい。お客さまもシェークスピアの世界に入り込みやすいと思う。常々、ここは日本のシェークスピア劇の始まりの地だと思っている。ここからスタートできるという喜びは大きい」と話す。
ジュリエット役を演じた山口夕稀南さんは「ジュリエットとしてバルコニーのシーンを演じることがシェークスピアを勉強した大学生時代からの夢だった私にとって、これ以上の幸せはない」と話す。
立ち見も含め約200人が観劇。終演後、高山さんは今後の活動への支援の募金を呼びかけ、手作りの本公演オリジナルピンバッジを一人一人に手渡した。
高山さんは「長い道のりを乗り越えてきた諸先輩方の思いを次の世代に引き継ぐためにも、51年目に向かって新しい気持ちでスタートを切るという思いを持って取り組む。37作品を見届けていただき、37個のピンバッジをもらっていただければ」と呼びかける。
12月に早稲田大学小劇場どらま館で第2弾となる「冬物語」の上演を行う。