東京メトロ大江戸線中井駅の隣にある書店「伊野尾書店」(新宿区上落合2)店主の伊野尾宏之さんが執筆した書籍「本屋の人生」が1月23日、本の雑誌社から出版された。
店頭に置かれた「本屋の人生」=中井の「伊野尾書店」店主が新刊「本屋の人生」
伊野尾さんの父・信夫さんが材木店を畳み、1957(昭和32)年にオープンした「伊野尾書店」。以来、街の書店として、近隣住民などから親しまれてきた。1999(平成11)年には、都営大江戸線の中井駅が新設されるのに伴い、今の店舗に建て替えた。現在、中井駅周辺では、唯一の書店となっている。
伊野尾さんは、店舗の建て替えと同時期に「伊野尾書店」に入社。2017(平成29)年からは社長となり、店を切り盛りしてきた。出版不況といわれる状況の中、取り扱う商品を少しずつ変えたり、新刊の出版に合わせて店頭でプロレスをする「本屋プロレス」、野宿をする「本屋野宿」、焼き肉をする「本屋焼肉」などユニークな取り組みをしてきたりもした。
出版のきっかけは、親交のあった本の雑誌社の営業・編集者の杉江由次さんから約10年前に声をかけられたことだった。「当時はなかなか書けなかった」と振り返る伊野尾さん。2024年1月に信夫さんが他界した際、改めて杉江さんから仮タイトルや構成の案と共に書籍化の提案があり、執筆を始めた。
執筆の途中だった昨年6月、今年の3月末で閉店することを決めた伊野尾さん。それに伴い、書籍の内容も変更することになった。「書き始めてから5分の1くらいで詰まったりもしたが、閉店を決めてから、秋ぐらいまでで一気に書き上げた」(伊野尾さん)という。
創業から現在に至る店の経営の変遷、伊野尾さんが育った環境、店を営業する日常の中で起こる客や店員、同業者とのエピソード、自身の生活や街の書店のリアルな姿を紡ぐ同書。本の帯には「伊野尾書店はただそこにあるだけの店だった。」のキャッチコピーも。サイン本も用意し、常連客が買い求める際には、伊野尾さんと談笑する姿も見られる。
伊野尾さんは「発表されたばかりの直木賞・芥川賞の書籍が並ぶ中、『本屋の人生』を買ってくれるお客さんには、少し申し訳ない気持ちもあるが感謝の気持ちでいっぱい。町場の店の変化、歴史、生活史、こういう所で生まれた人がこういうふうに生きたということに興味を持ってくれる人に読んでもらえたら」と話す。
価格は1,870円。1月29日にジュンク堂書店池袋本店で開かれた伊野尾さんのトークイベント「中井・伊野尾書店の『本屋の人生』に迫る インタビュアー石橋毅史」が開催された。のアーカイブを現在、配信している。料金は、視聴のみ=1,100円、書籍付き=2,640円。2月13日まで。