特集

子どものためのプログラミング道場「CoderDojo」

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■インタビュー
 安川要平さん 一般社団法人CoderDojo Japan 代表理事 
 宮島衣瑛さん 一般社団法人CoderDojo Japan 理事・DojoCon Japan 2018 実行委員長 

 サイボウズ東京オフィス(中央区日本橋2)で8月25日、日本最大のCoderDojo(以下、コーダー道場)の祭典「DojoCon Japan(ドウジョウコン ジャパン) 2018)」が行われ、関係者を含む300人が集い、セッションやワークショップに参加した。

高田馬場に拠点のある、一般社団法人CoderDojo Japan(以下、コーダー道場ジャパン)(新宿区高田馬場1)の安川要平代表理事によるセッション「CoderDojo Japan 活動実績」の中では「フェイスブック ジャパンはプログラミングを主体的に学ぶ姿勢が大切であるという思いに共感して、コーダー道場 ジャパンと協力して全国のコーダー道場コミュニティーを支援していきます」というメッセージが発表された。

左:安川要平さん 右:宮島衣瑛さん(フェイスブック ジャパンにて)

 コーダー道場とは、オープンソースコミュニティーの文化から発祥した非営利の子どもたちのためのプログラミング道場。2011年にアイルランドで始まり、現在は全国で150カ所以上、世界では100カ国・1900以上の道場が定期的に開催されている。一般社団法人コーダー道場ジャパンは、アイルランドに本部を置くCoderDojo Foundation (以下、CoderDojo 財団)とライセンス契約を結び、日本各地域のコーダー道場コミュニティーの活動を支援する公式の法人として2016年に新宿区高田馬場で設立された。

―― 宮島さんがコーダー道場に関わるきっかけは?

宮島:もともとプログラミングには興味があって幼稚園の頃からレゴブロックの教室に通っていました。中学3年の夏にMIT(マサチューセッツ工科大学)で行われたスクラッチカンファレンスに参加する機会を得ました。そこで日本で始まったばかりのコーダー道場の関係者の人たちと出会いました。

 2013年5月、15歳のときにコーダー道場柏のチャンピオンになりました。コーダー道場では、道場の運営者をチャンピオン、参加する子どもたちをニンジャ、ボランティアで子どもたちを助けてくれる人をメンターと呼びます。僕が15歳でチャンピオンになった理由は簡単で、僕が参加できる道場が無かったからです。

コーダー道場柏 の様子

―― 15歳の運営者ですか?

安川:例えば、コーダー道場 岡山岡南の曽我悠真さんは14歳でチャンピオンになりました。「(法的な年齢制限などの理由から) 大人と一緒に運営すること」といった条件はありますが、コーダー道場コミュニティーでは、中学生でもチャンピオンになれる仕組みが出来上がっています。

―― そして宮島さんは20歳で一般社団法人コーダー道場ジャパンの理事に就任

安川:法人の理事は立候補者の中から選出しました。2017年11月4日に開催された「DojoCon Japan 2017」の僕のセッションの中で、宮島さんが理事になることを発表しました。既に十分な実績を残していたこともあり、他の立候補者やコミュニティーにとっても納得できる結果だったと思います。

―― 宮島さんが、「DojoCon Japan 2018」の事務局長に就任したのは?

宮島:前回の「DojoCon Japan」終了後の懇親会で、僕も含めた4人で「次は東京で僕たちがやります」と手を挙げたんです。そして準備のための最初のミーティングを僕が招集したことからの流れで実行委員長ということになりました。僕は大学に通いながら会社も経営をしていて、コーダー道場柏ではイベントの企画運営もやってはいるのですが、実行委員が約50人、来場者が300人という規模のイベントは初めてで本当に大変でした。

安川:運営スタッフ50人のうち、2016年に開催された初回の「DojoCon Japan」から関わっていた実行委員は僕を含めて2人だけなんです。実行委員の経験者が48人も増えたということもコミュニティーの財産ですね。

―― 一般社団法人CoderDojo Japanを立ち上げた経緯は?

安川:コーダー道場は、 「CoderDojo 憲章」に同意すれば誰でも道場を立ち上げることができます。各道場の活動の決定権はそれぞれの道場が持っていて、憲章に基づいた活動であれば誰かに許諾を求める必要はありません。一方で、日本だけで150以上の道場が存在するという規模にもなると、コミュニティー活動に共感したり提携・支援していただける法人も増えてきます。

 そういった法人間の連携機会を最大化し、コミュニティー活動をより一層楽しく継続しやすくするために、2016年に法人化を提案しました。当初は「法人化して何が変わるのか?」といった質問もありましたが、ここ2年でさまざまな実績ができたため、今では法人化の価値はコミュニティーに十分に認められてきたのかなと考えています。僕個人が立ち上げた「CoderDojo Japan」のグループやウェブサイトの所有権も「一般社団法人 CoderDojo Japan」に委譲したため、現在はチームとして「CoderDojo Japan」を運営しやすくなった点も大きいです。


―― コーダー道場ジャパンの役割について教えてください

安川:例えば昨年、トヨタ自動車と物体認識技術や車両情報の解析技術などについて共同研究・開発を行っているPreferred Networksさんから、デモで使われたLEGO マインドストーム20セットをコーダー道場に寄贈したいとオファーを受けました。コーダー道場ジャパンでこれを受け入れ、法人を置く高田馬場のオフィスにチャンピオンやメンターの人たちが集まって仕分けをして全国の道場に送りました。ほかにも、セールスフォース・ドットコムからの279台のモニタ寄贈や、さくらインターネットによるサーバー支援もあります。

仕分け当日の様子 (高田馬場 CASE Shinjukuにて)

 このように、コーダー道場を支援したいという他団体とコーダー道場コミュニティーをつなぐことがコーダー道場ジャパンの担う役割の一つです。今回「DojoCon Japan 2018」で発表したフェイスブック ジャパンとの連携もそうですが、全国のコーダー道場コミュニティーを支援したいという時に、150以上ある道場と一つずつ契約するのは骨が折れますし、各道場にとっても負担が大きい。そこで役割分担をして、法人にとってもコミュニティーとってもうれしい形を実現させようというのが法人化になります。あくまでも役割分担で、上下関係はありません。

 他にも、CoderDojo 財団との連携という役割もあります。日本にコーダー道場ジャパンがあるように、世界中の1,900以上ある道場のまとめ役としてCoderDojo 財団があります。日本では日本語での発信が多いので、例えばその中のユニークな活動を英語で共有して、CoderDojo 財団から世界中の道場に発信してもらったりしています。例えばコーダー道場諏訪湖のプログラミングShipがその一例です。

―― 2020年に小学校でプログラミング教育が始まります。そのことで変化を感じますか?

宮島:プログラミング教育は、これから大きく変わっていくと思います。その一つのゴールが2020年といわれています。コーダー道場はプログラミング教育が今ほど注目されていないころから、純粋にプログラミングをやりたいという「思いドリブン」で行われています。そういう意味でも2020年まで、また2020年の後も、コーダー道場が果たす役割があると感じています。

安川:コーダー道場と学校との役割分担の事例については資料を公開しています。もしコーダー道場との連携を検討されている自治体があれば、「CoderDojo Kashiwa 事例」で検索してみてください。

―― もう一つ、未来の話を。宮島さんが好例かもしれませんが、コーダー道場で学んだ子が成長していきます。そのことによる変化を感じますか?

宮島:ありますね。柏の事例で言えば、僕が高校1年生のときに始めた当初、小学校4~5年生だった子どもたちが今、中学3年から高校2年くらいになって道場に戻って来てくれているんです。日本の中学校は部活などで忙しくて、中学のときにはなかなか来られなかったけど、高校生になって少し時間的にも自由になってメンターとして戻って来てくれている。「これで循環が生まれた」と僕は思っています。

―― プログラミングやデザインが面白いということもあると思いますが、コミュニティーそのものが彼ら彼女らにとって心地よいという側面もありそうです

宮島:あります。そちらの比重のほうが高いように思います。単純にプログラミングを学びたいとか、より高度なことをしたいのならコーダー道場である必要はない。僕は自分が立ち上げる以前はコーダー道場がなかったので、自分で勉強していましたし、今はインターネットや別のスクールもあるのでプログラミングを学ぶということでは代替は幾らでもあります。やはりコミュニティーの良さというものがあって、そこが価値となっている。実際にやっていて正直「このコミュニティーは面白いな」と思います。

安川:最近、うれしいと思うのは「今の子どもたちは恵まれているね」と言われること。コーダー道場だけをとっても今は150以上の道場がある。どの地域でも近くにコーダー道場があるという社会が近付いています。コーダー道場を経由して、子どものころから学校以外で多様な人たちと簡単につながれる。それは少なくとも僕や宮島さんが子どものころには無かったことです。

「DojoCon Japan 2018」のワークショップの様子

 「DojoCon Japan 2018」に来てくれたスポンサーが子どもたちを見て、「日本の未来は明るいですね」と言ってくださいました。そういうフィードバックが本当にうれしい。彼ら彼女らが日本の未来を担うかどうかは別として、ただ自然とそういう気持ちになれるということが、コーダー道場がある世界と、無かった世界とで大きく違うことの一つかなと思います。子どものころから多様な人たちとつながって、国内外でさまざまなチャレンジをして、「いいねー、いいねー」と言い合って研さんしていける。そういう未来の方が期待を持てるじゃないですか。

おわり

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