水稲荷神社(新宿区西早稲田3)で「高田富士祭」が7月16日、17日、4年ぶりに行われた。
水稲荷神社は941年の創建で、「水と緑の鎮守、日本稲荷古社の随一」といわれる神社。当初は「富塚稲荷」「将軍稲荷」と呼ばれていたが、江戸時代に眼病に効能があるとされた霊水が涌き出たことから水稲荷神社と改称。1963(昭和38)年には早稲田大学と土地交換を行い、現在の場所に移転した。
高田富士祭は毎年、海の日やその前日の日曜、月曜などの2日間、開催されている。普段は登れない富士塚「高田富士」を登拝(登って参拝)できる。富士山頂の岩や土で作られたという高田富士は約10メートルあり、「江戸の人造富士中、最大最古のもの」(水稲荷神社)と伝えられている。
当日は天候にも恵まれ、小中学生や若者、親子連れなどが訪れ、参道は人で埋め尽くされるほどの活況で、久々の高田富士祭を楽しむ姿が見られた。神前の奉納芸能では、早稲田大学男子チアリーディングチーム「SHOCKERS」のOB、ソプラノ歌手の福島由記さんのパフォーマンス、和太鼓会「和光太鼓」による盆踊りや演奏を行った。
高田富士の入り口では登拝の呼びかけが行われ、貴重な機会を楽しむ人の姿も見られた。山頂にはかねがあり、祈りながらたたくことができる。「カーン、カーン、カン、カン、カン、カン、カーン」とかねの音が鳴り響き、祭りの雰囲気が近隣にも漂った。
4年ぶりの再開に合わせて、祭りの存続のために新しい取り組みも。新たにちょうちん奉納を幅広く呼びかけたことで例年の4倍の数が奉納された。縁日も町会の出店を加えて、外部の出店者を募集。焼き菓子、アユの塩焼き、インド料理などの屋台のほか、マッサージ、占い、アートバルーンが出店し、にぎわいを創出。これまで厳しかった収支状況の改善につなげた。
水稲荷神社責任総代の大井一良さんは「周辺の住環境が変わったり、町会の人の高齢化が進んだりして、これまで通りのやり方では神社や祭りの維持が難しい状況になってきている。次世代へつないでいくためにも改革を続け、新しい高田富士祭を目指していきたい。今日は以前と変わらないにぎわいで良かった。『これが夏の祭だ』という感じがした」と話す。
水稲荷神社では9月に例大祭を予定している。