1月30日に配信が始まるユーチューブ番組「聞き流す、人類学。」のキックオフイベントが27日、東京YMCA山手コミュニティセンター(新宿区西早稲田2)で開催される。
主催は、ボルネオ島の狩猟採集民「プナン」とのフィールドワークを続ける人類学者の奥野克巳さん、妖怪絵本作家の加藤志異さんらが2023年11月に立ち上げた「千早振る人類学研究会」。「千早振る」は、同名の古典落語に登場する「知ったかぶりのご隠居」を、人類学を含む学問になぞらえ、戦争やさまざまな社会的課題に対して、知ったかぶりだけをして、無力であることをやゆしている。人類学をベースとしながらユーチューブチャンネルを立ち上げ、そこから「逃走線を引きながら、生きづらい現代社会に処方箋を与えることを目指す」という。
代表を務める加藤さんは「ある日、深夜の飲み屋で奥野さんから唐突に『ユーチューブチャンネルをやりましょう』と言われた。その言葉を真に受けて詳細な企画書を書いたことをきっかけに、10人以上の仲間が集まりプロジェクトが立ち上がった」と振り返る。
「私自身が、毎日わくわく自由に生きたいと思いながらも常識に縛られ生きづらさを感じる中で奥野さんを通してプナンの人々の生活を知った。この世界にこのような生き方をしている人がいることを映像などで知ることができれば、生き方の幅が広がるのではないかと考えた」と言う。
キックオフイベントのタイトルは「ガラクタの知識まみれの現代社会から逃走線を引き、狩猟採集民の忘れられた知恵をひろって、新世界の地図を描く」。加藤さんを司会に、奥野さん、社会学者の宮台真司さん、考古学者の石井匠さん、言語学者の伊藤雄馬さんが、多様な角度からこれからの世界を生きる知恵について語り合うという。タイトルは、英国の社会人類学者ティム・インゴルドの「知識に知恵を調和させていくことが大事」という主張を引用したもの。
加藤さんは「この現代日本社会を生きにくいと感じている人に参加してもらいたい。人類学者、社会学者、言語学者、考古学者が集まり、狩猟採集民の知恵を語る。資本主義社会だけではない、 こんな豊かな生き方もあるのだという発見をしてほしい。そして、この社会で生きることが楽しくなるきっかけになれば」と話す。
開催時間は13時30分~16時。定員は会場100人、オンライン500人。参加費は会場前売り=2,000円、当日=2,500円、学割=1,500円、オンライン=1,000円。