早稲田大学文学部演劇映像コースが、劇場版「鬼平犯科帳 血闘」公開に先立って4月27日、主演の松本幸四郎さんをゲストに迎えスペシャルトークショーと先行試写会を開いた。
「鬼平犯科帳」は、池波正太郎の代表作で累計発行部数3000万部を超えるベストセラー時代小説。テレビでのレギュラー放送は開始から55年を迎える。劇場版「鬼平犯科帳 血闘」は池波正太郎生誕100年記念作品として、主演の長谷川平蔵に幸四郎さんを迎え8年ぶりに映像化。5月10日から全国の劇場で公開される。
幸四郎さんは、祖父の初代松本白鸚、叔父の故二代目中村吉右衛門さんに続き長谷川平蔵役を務める。
イベントは、テレビの時代劇番組の減少などで触れる機会が少なくなった時代劇の魅力を若い世代の人にも理解して欲しいとの趣旨で開催。当日は250人が参加し、うち50人を超える学生の参加があったほか、同大学歌舞伎研究会が受付などスタッフとして運営に関わった。
スペシャルトークショーは、幸四郎さんと長く交流のある歌舞伎研究と評論を専門とする同大学の児玉竜一教授、常磐津節太夫で歌舞伎研究家の鈴木英一さんの鼎談(ていだん)で行った。
トークショーの中で幸四郎さんは「祖父の鬼平から始まり叔父が長く多くの人々に愛される作品を作り続けたからこそ今、自分が関われる時がきた、見ていただく時がきたのだと思う」と話した。作品については「時代劇という枠というよりは、単純に人間ドラマを見てもらいたい。それが時代劇であり、歴史でもあるという思いでいる。また、いろいろな鬼平犯科帳があったことを余韻として楽しんでもらえれば」と話した。
トークショーを終えた児玉教授は「時代劇を若者が見なくなったとはいえ、一定数、好きな学生がいることを心強く思った。時代劇は過去を正確に描くわけではなく、過去に姿を借りて現代を描く物語を語る普遍的な形式。それを体感してほしい」と話した。
同映画プロデューサーの田倉拓紀さんは「時代劇は実際にその時代に生きた人がいない、自分が全く経験できないものという意味でファンタジーに近い。時代劇はシニアが見るものなどと捉えずに一種のファンタジーとして若い方にも見てもらえれば」と呼びかける。