アダチ伝統木版画技術保存財団(新宿区下落合3、TEL 03-3951-1267)が現在、「数字でわかる 北斎『神奈川沖浪裏(なみうら)』の世界的評価とその魅力」を開いている。
新1000円札とアダチ版画研究所のポストカード「神奈川沖浪裏」
同財団は、江戸時代の浮世絵の制作技術を持つ版元、アダチ版画研究所が伝統木版画技術を次世代に継承し、広く国内外に紹介することを使命として1994(平成6)年に設立。「伝統木版画の制作技術に関する研究などの奨励と保存」「技術者の擁護育成」「普及」「日本の美術文化の発展」を目的として活動する。
同展は、財団設立30周年記念と合わせて、7月3日から20年ぶりにリニューアル発行されている新1000円札裏面に葛飾北斎の代表作「富嶽三十六景」の「神奈川沖浪裏」が採用されたことを祝って開催する。
同展を担当する渡邉葵さんは「『神奈川沖浪裏』は北斎の浮世絵の中でも世界的に評価が高い作品。1000円札に採用されたということで、国内外の美術館の所蔵数やオークションでの落札価格、構図の比率など、作品にまつわるさまざまな数字に注目し、より具体的にその価値と魅力を広く知ってもらえるよう企画した」と話す。
展示は、北斎が38歳ごろに波を描いた作品から70歳ごろに描いた「神奈川沖浪裏」までの波の表現の変遷、版木や顔料などの道具と制作工程、北斎の画業の変遷、遠近法や化学合成顔料プルシアンブルーなど西洋美術がもたらした新たな表現、浮世絵が西洋美術に与えた影響などについて、アダチ版画研究所の技術者が復刻した浮世絵とパネルで紹介する。
渡邉さんは「新1000円札に採用され、興味を持ってもらえるタイミングで、改めて、浮世絵というものが絵師・彫師・摺(すり)師、それぞれ技術を磨いた職人たちが作り上げる総合芸術だということを知ってもらいたい」とも。
「復刻版の制作は、江戸時代とほぼ同じ道具と工程を踏襲している。当時の人たちが楽しんでいた色味や質感をタイムスリップしたように楽しめることが刻版の浮世絵の魅力。この機会に足を運んで見ていただきたい」と呼びかける。
関連イベントとして8月10日、世界二大オークションハウスの一つ、クリスティーズジャパンの山口桂社長による講演会「浮世絵とオークション -世界の中の浮世絵 北斎を中心に-」を開催するほか、期間中、子どもも楽しめるトークイベントや刷り体験イベントなどを開催する。
開館時間は10時~18時(土曜は17時まで)。日曜・月曜・祝日休館。入場無料。8月24日まで。