高田馬場駅前ロータリー広場(以下、ロータリー広場)の閉鎖に使われている柵の金網に複数の南京錠が取り付けられ、ネットで話題になっている。
全面閉鎖された高田馬場駅前ロータリー広場全体の様子(駅前ビル屋上から撮影)
ロータリー広場は、待ち合わせ場所として多く使われるなどしていたが、新宿区は新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、ロータリー広場での外飲みなどを防止するため4月9日からロータリー広場の3分の2を閉鎖、5月18日からは全面閉鎖している。全面閉鎖は初めてだという。
早大卒で表現グループ「いぬのせなか座」を主宰する山本浩貴さんが、柵の金網に南京錠が取り付けられている様子を6月13日、ツイッターで「馬場封鎖ロータリーわらったね」と紹介。同17日時点で、1000以上のリツイートと4000近くの「いいね」が付いている。南京錠のことは友人から「話題になっているものがある」と教えてもらったという。
8つ取り付けられた南京錠には、「恋の緊急事態」「1917 11/7」「愛」などの文字が書かれている。山本さんは「一目見て、驚くとともにすごく笑ってしまった」と話す。「私は自粛を巡る対応への悪ノリも含めた抗議の一つとして受け止めた。しかし、カップルが恋愛成就のために始めた可能性もあり、『誰が何のためにやったか』が絶妙に曖昧になる点も含めて興味深い」と振り返る。
山本さんのツイートのリツイートでは「湘南平かな?」「ザルツブルクじゃん」など南京錠で知られるスポットに言及するものや、「ロシア十月革命の日付で草」「ソヴィエト革命が紛れてるの草」(以上、原文ママ)など、書かれた日付に言及するツイートも見られる。
山本さんは「在学中も卒業後も友人と会うときはロータリー広場で集まり、そこで解散してきた。昼夜問わずいろいろな話をしてきた場所。清掃も含め最低限の想像力と配慮をもって使うことは今後も求められていくのでは」と広場への思いを語る。その上で、「普段なら相いれないような人たちとの関わりが生まれるロータリー広場は改めて大切な場所だと感じる。感染防止の観点でやむなしというところもあるかとは思うが、個人的には、可能な限り早い全面解除を望んでいる」と話す。
「散乱ゴミ問題を解決することで『ロータリー新文化』を創造し、高田馬場の誇れる象徴にする」ことを目指している早大公認の学生サークル「ロータリーの会」代表の新井国憲さんは「見たときはユニークだと率直に感じた。やり方に問題があるとは思うが、ロータリー広場が閉鎖されたことをよく思っていない人が僕らだけじゃないということだと思う」と複雑な心境を明かす。
職場も自宅も高田馬場という40代の男性は「ロータリー広場の喫煙所が使えなくなり不便を感じている。ロータリー広場の閉鎖は特定の誰かが悪いということではないと思うし、新型コロナで誰かをたたかないと気が済まない人が増えている気がする。この程度のことは和やかな気持ちで見守るくらいの余裕があってもいいのでは」とも。
新宿区は「不法投棄や器物損壊(きそん)に該当する可能性がある」として6月16日、私物を放置しないように警告する貼り紙を掲出。時期は未定だが、放置されている南京錠は撤去する予定という。担当者は「どういう狙いか分かりかねるが、このような行為はやめていただくようお願いしたい」と呼び掛けている。6月17日時点で23個の南京錠が取り付けられている。区はロータリー広場を開放する時期を「未定」としている。