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早大演劇博物館、「新派」をテーマに秋季企画展 館蔵品180点など公開

秋季企画展「新派SHIMPA アヴァンギャルド演劇の水脈」を担当した、早稲田大学演劇博物館助教 後藤隆基さん

秋季企画展「新派SHIMPA アヴァンギャルド演劇の水脈」を担当した、早稲田大学演劇博物館助教 後藤隆基さん

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早稲田大学演劇博物館(新宿区西早稲田1)が現在、秋季企画展「新派 SHIMPAーーアヴァンギャルド演劇の水脈」を開催している。

早稲田大学演劇博物館 企画展の垂れ幕

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 「新派」は、明治時代に確立した日本の演劇の一派で歌舞伎(旧派)に対して称された新しいスタイルの演劇。明治20年代、自由民権思想の啓発のために、角藤定憲や川上音二郎といった政治青年たちが興した「改良演劇」が遠祖といわれ、また同時期には伊井蓉峰らが政治色を廃し、男女合同の芸術至上主義的な演劇を目指した。明治30年代後半から「新派」の名が定着していった。

 同展を担当した後藤隆基さんは「新派は、和洋の折衷で、西洋のものと日本由来のものを融合させながら作られてきた。今回の展示は、新派に関する膨大な館蔵品を西洋建築の当館の建物を生かした展示空間でお見せしたかった。空間を生かしながら資料が栄えるような展示を心掛けた」と話す。

 展示は、第1章「明治演劇のアヴァンギャルド」、第2章「多彩な劇世界をめぐる」、第3章「新派と映画の交差」、第4章「目眩(めくるめ)く衣裳(いしょう)の魅力」、第5章「戦後新派の脈動」、第6章「新派の現在地」の構成。総計約200点の展示品のうち、約180点を同館の館蔵品で構成する。

 後藤さんは「新派というと歌舞伎に対抗するイメージが強いが、当初は歌舞伎役者から演技指導を受け、歌舞伎の演目をベースにしたものを上演するなど、その影響を色濃く受けていた。第1章では、歌舞伎的なものから、徐々に西洋演劇の手法や、絵画の遠近法や電気など当時最新の技術が取り入れられ、常に新しさを更新し続けた明治期の新派の様子を、錦絵をはじめとする館蔵品を中心に構成。演劇の世界に彩りを加えた明治期の新派の面白さが味わっていただける」と話す。

 第2章では、新収蔵品で同館初公開の明治期以来のスター俳優、伊井蓉峰のデスマスク、一世を風靡(ふうび)した初代水谷八重子にまつわる品、モダニズム時代のポスター群などを展示。第3章では、同館所蔵の新派映画「生さぬ仲」や「うき世」の映像と共に、台本、チラシ、ポスター、書籍、楽譜まで大正・昭和初期の多彩な資料で、戦前の新派と映画の関わりを紹介。第4章では、戦前から戦後を代表する女方、花柳章太郎と交友のあった奥村土牛、小村雪岱、伊東深水らが手掛け、花柳章太郎が舞台で使用した衣装を、第5章では、1949(昭和24)年に誕生した劇団新派の舞台写真、ポスターなどを、第6章では、二代目喜多村緑郎、河合雪之丞の出演作「黒蜥蜴」などの台本や舞台写真などを展示する。

 後藤さんは「新しいものが作られる中で生き残っていく作品は古典としての力を持っている。古典の読み直しということも含めて、『アヴァンギャルド』を考えることで、新派が持っていた新しさと同時に残っているものに改めて目を向ける企画になっていれば。何よりこの展示で新派に興味を持ち、劇場に足を運ぶきっかけになればうれしい」と話す。

 同時開催する特別展「家族の肖像ーー石井ふく子のホームドラマ」は、舞台演出ほか新派とつながりが深い石井ふく子さんが手掛けるホームドラマも一つの新派の水脈という位置付け。常設展も、今年生誕150年、没後60年となる初代喜多村緑郎や、生誕140年の小山内薫などに関する展示品を入れる。後藤さんは「館全体がつながるような展示構成になっているので、足を運んでもらいたい」と呼び掛ける。

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