早大南門通りにある古書店「ブックス ルネッサンス」(新宿区西早稲田1)が3月31日、閉店した。
同店は店主の浅利武史さんが機械工具の専門商社に勤務した後、2002(平成14)年4月にオープン。オールジャンルの古書店として営業してきた。店名について、浅利さんは「店を始める時、周囲から『いまさら古本屋なんて』と散々言われたが、やりようだと思った」と話し、文芸復興を意味する「ルネッサンス」にしたという。
開店時は冒険記や旅行記といった、旅行好きの浅利さんの蔵書約3000冊から始まった。その後は「何でもござれ」(浅利さん)と、退官する早大の教授などから買い取りの依頼を受けた際、値が付かないものも引き取っていたといい、最盛期の在庫は約10万冊だったという。
本があふれる店内が特徴であった同店。当初は、オープン時に店内に合わせて作った棚に収納していたが、徐々に積み上げるようになった。浅利さんは「きれいにセレクト感を持ってやりたいと思っていたが、棚が稼働式ではなかったり、時がたつにつれて大判の書籍が増えてきたりして、そんなふうになっていった」と振り返る。
早稲田大学南門通り商店会の役員としても活動していた浅利さんは「人と話したり、配布物を持っていったり、商店街活動は楽しかった」と話す。近くの洋食店「キッチン南海 早稲田店」が閉店する際には、浅利さんの日頃の人付き合いで、店主だった大根田新さんと「A&A CAFÉ」前オーナーの石井直樹さんをつなぎ、「キッチン南国」(新宿区戸塚町1)として石井さんが引き継ぐきっかけをつくった。
早大に近いこともあり、学生との付き合いも多かった。浅利さんは「始めた頃は若かったから、学生さんとも飲みに行ったり、遊びに行ったりした」と話す。「学生がおごってくれるという時は、『わっしょい』や『一休』など、学生が行きつけの店に連れていってもらった」とほほ笑む。「だんだんそういう人間関係も減ってきた」とも。
「開店当初はよく売れた。でも調子が良かったのは10年ぐらい。あとの半分は店の維持をするのが精いっぱいだった」と浅利さん。2020年3月に閉店するつもりだったというが、コロナ禍になり「支援の給付金などをもらっていたので、そのままやめるわけにはいかなかった」と話す。今後は神保町の古書店「@ワンダー」「@ワンダーJG」で働く。
浅利さんは「21年間営業できたのはやっぱりこの街のおかげ。学生や教職員の皆さんに支えられて非常にラッキーだった。最後のギリギリ良い時代に商売ができたと思う。備え付けの棚を引き取ってくれたり、この場所で店をやってくれたりする人がいたらうれしい」と話す。