「第9回早稲田大学坪内逍遙大賞」の授賞式が11月28日、リーガロイヤルホテル東京(新宿区戸塚町1)で行われ、大賞の池澤夏樹さん、奨励賞のグレゴリー・ケズナジャットさんが出席した。
同賞は早大文学部の前身・東京専門学校文学科を創設した坪内逍遙をたたえようと2007(平成19)年、早大創立125周年を記念して創設。文芸をはじめ、文化芸術活動に著しく貢献した個人また団体を隔年で顕彰する。これまでに作家の村上春樹さん(第1回)や映画監督の是枝裕和さん(第7回)らが受賞している。
9月に受賞者が発表され、大賞の池澤さんは幅広い著作や、近年の個人編集による「世界文学全集」「日本文学全集」(各30巻、河出書房新社)の刊行、今年出版した長編小説「また会う日まで」(朝日新聞出版)が評価された。次世代の文化の担い手に贈られる奨励賞のケズナジャットさんは、日本語で発表したデビュー作の「鴨川ランナー」や芥川賞候補作にもなった「開墾地」(以上、講談社)が評価され、満場一致での受賞となった。
池澤さんは受賞について、「みんな小説を書くようになり、さまざまな形のものが書かれるようになった。今の隆盛とも言える。この時代に至っている、それら全部の始まりに坪内逍遙が『小説神髄』をもって、新しい文学のスタートを切った。そこに思いを乗せながら、この賞の重みとありがたさを感じている」と話した。
創作について「読者の安全性を確保するおりを揺さぶりたかった」とケズナジャットさん。「奨励賞を頂くこととなって、このような模索を進めることの価値を認めてもらえたと思っている」と話した。