アダチ伝統木版画技術保存財団(新宿区下落合3、TEL 03-3951-1267)が2月27日、「第15回アダチUKIYOE大賞」を発表した。
優秀賞を受賞した中島華映さんの作品「花くだりの休息」Copyright: Hanae Nakajima
同財団は、江戸時代の浮世絵制作技術を伝える版元「アダチ版画研究所」が1994(平成6)年、「伝統木版画の制作技術に関する研究などの奨励と保存」「技術者の擁護育成」「普及」「日本の美術文化の発展」を目的に設立した。
「アダチUKIYOE大賞」は2009(平成21)年から、版画の版下絵を描く「絵師」を募集する目的で行ってきた。審査では、応募されたポートフォリオから画風や制作活動の成果、伝統木版との相性や現代の浮世絵師としての可能性などを総合的に判断した。
15回目となる今回、初めてオンラインによる応募も受け付けた。その結果、国内46件、海外81件(世界35カ国)、合計127件と、前回と比べ3倍近い応募があった。
大賞受賞者は、ロサンゼルスを拠点に作家活動を行うジェイミー・スコルニックさんで、初の海外からの応募者の受賞となった
棟方志功のファンというスコルニックさんの作品は、「版画的な表現を絵画によって表すという逆説的な試みにより制作されており、それを木版で制作することに面白みを感じた。また、一時期、福井県今立郡に滞在経験があり和紙に対する造詣と愛着の深さも、共に仕事をするにふさわしい」と評価された。
優秀賞は中島華映さん。民族衣装などの伝統的な服飾に興味を持ち、大学では日本の服飾文化を学んだ経歴や作風などから、現代の服飾や装いが反映された21世紀の美人画の誕生が期待されての受賞となった。
受賞者の2人には賞金が贈られるほか、それぞれが描いた版下絵をもとに、アダチ版画の彫師・摺師が木版画を制作する。
今回、佳作の該当者はなしとした。
同財団は「今後も、未来の浮世絵師を広く世界に求める公募として発展させたい」という。