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エンパク前舞台でサイレント映画上映 秋の夜空の下、16ミリフィルムで鑑賞

「エンパクシネマ2019」の様子(提供:早稲田大学演劇博物館)

「エンパクシネマ2019」の様子(提供:早稲田大学演劇博物館)

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 「早稲田大学演劇博物館」(東京都新宿区西早稲田1、TEL 03-5286-1829)が10月1日、「エンパクシネマ2019」と題し、無声映画の野外上映会を開催した。秋の夜空の下、450人以上の人が活動写真弁士の語りと生演奏で16ミリフィルムのサイレント映画を楽しんだ。

「エンパクシネマ2019」の様子 鑑賞の様子

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 2018(平成30)年に90周年を迎えた同館は、坪内逍遙の発案で、エリザベス朝時代、16世紀イギリスの劇場「フォーチュン座」を模して設計された。上映会場となる前舞台は、ハーフティンバー様式の建物に囲まれ、開館当時よりさまざまな演劇公演の舞台となってきた。

 「エンパクシネマ」は、「Totus Mundus Agit Histrionem(全世界は劇場なり」と、ラテン語で掲げられたこの前舞台に設置した大型スクリーンにサイレント映画を投影し、弁士の語りとギターとフルートの生演奏で鑑賞するイベント。3回目の今回は180席用意した椅子席のほか立ち見も合わせて、来場者は450人を上回ったという。

 上映した映画は3本。日本のアニメーション作品「一寸法師ちび助物語」を山内菜々子さんが、古典的ギャグ満載のコメディー短編「ドタバタ撮影所」を山城秀之さんが、「映画の父」として知られるD・W・グリフィス監督の代表作、悲劇「散り行く花」を澤登翠さんが説明した。

 澤登翠一門を率い日本独自の文化である活動弁士の育成や国内外での普及に努める澤登さんは、「演劇と映画は深い関係にある。その意味でも、この演劇博物館で3年の間、上演が継続していることに感謝している。私自身は2回目の出演。前回も多くの人に集まっていただき、楽しい場面では笑い声が夜空に心地よく響いた。風に乗って笑い声が広がっていく感覚は野外ならでは。夜風も鑑賞しているようで心身が活性化されるような体験をした」と振り返る。

 サイレント映画については、「100年近く前に制作されたサイレント映画の中に人間の基本的な喜怒哀楽が全て網羅されている。そのことへの驚きと敬意は大きい。そしてエジソンやリュミエールなど映画を編み出した発明家たちの『新しい視覚的な娯楽を』という考え方に引かれる」。活動弁士については、「活動映画館時代は、字幕の書き写しと、あらすじを元に弁士が台本を書いていた。自分なりに解釈をして台本を書くことは弁士の仕事の楽しみの一つ。弁士によって解釈も違えば選ぶ言葉も語り方も変わる。当然、観客の受け止め方も変わる。世界中の名監督が作り出した映像の世界は、繰り返し鑑賞しても飽きることのない豊かなもの。映像それ自体が持つ魅力と弁士が語るライブ感を楽しんでほしい」と話す。

 同館が上映後に行ったアンケートには、「来年度も開催してほしい」という声や、具体的な作品リクエストが増えた。活動写真弁士と生演奏付きで無声映画を見たことがない観客からは「筆舌に示しがたく大変素晴らしかった」などとの記載があったという。

 早稲田大学演劇博物館助教の久保豊さんは、3回目となる今回の上映会について、「映画文化や技術を来場者に間近で体験してもらうために16ミリのフィルム上映とした。長尺の作品を上映することで、単純に笑ったり驚いたりするだけでなく、映画と社会の密接な関係性を来場者に考えてもらえるようにプログラム作りを意識した」と振り返る。「過去2年と比べて若い観客が増えた印象を受けた。演劇博物館の舞台前という特徴的な空間に引かれたという意見も多く見られた」とも。

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