早稲田、高田馬場を拠点とするノンフィクション作家、本橋信宏さんのトークショーとサイン会が4月12日、芳林堂書店(新宿区高田馬場1)で開かれた。
本橋信宏さん「高田馬場アンダーグラウンド」サイン会の様子 芳林堂書店
イベントは、本橋さんがノンフィクション「東京の異界シリーズ」の第5弾となる最新刊「高田馬場アンダーグラウンド」にまつわる秘話を語るトークショートとサイン会で構成。
同著では、著者の父母の時代から、1975(昭和50)年に早稲田大学に入学してからも、早稲田・高田馬場を活動の拠点にしてきた著者自身にまつわる逸話や、まちに残る手塚治虫、江戸川乱歩、寺山修司など著名人の軌跡、「ビニ本」をはじめとする成人向け雑誌の出版社など、風俗に関わる男女の「栄枯盛衰」が、具体的な地名や風景を織り込みながら生々しく語られる。
トークショーは、80枚以上という写真を投影しながら進行、時には著書に記述のない裏話も飛び出した。予定されていた時間を大幅に超過したにもかかわらず、トークショーの後のサイン会にも、多くのファンが会場に残って列をなした。一人一人に丁寧に名前を聞き、会話を楽しみ、気軽に写真撮影にも応じる本橋さんの気さくな人柄がうかがえた。
参加者の中には、本橋さんのファンのほか、早稲田・高田馬場在勤在住者、早稲田大学OBなど地域にゆかりのある人も多く、早稲田・高田馬場で起こった出来事に親しみを持って耳を傾けていた。
著書を読み、イベントを楽しみにして来たという30代の男性は「本書には、多くの若者が集まり、熱気と狂気が渦巻く高田馬場周辺の物語がつづられている。70年代、一世を風靡(ふうび)した成年向け雑誌『ビニ本』『自販機本』をつくる会社の集積があり、それを著者は『ヘアバレー』と名付けている。あまり知られていないが、近年ではスタートアップやベンチャーが集積するエリアになりつつあり、私たちは密かに『バババレー』と呼称していた。若者が集い、新しいビジネスに挑むということが過去にもこの地であったことが知れ興奮した。高田馬場の魅力に触れることができる一冊、お薦めしたい」と話す。