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早稲田大学応援部、新型コロナで続く挑戦 「考える機会つくり、存在意義を追求」

昨年、明治神宮野球場で開催された春の早慶戦の様子(提供:早稲田大学応援部)

昨年、明治神宮野球場で開催された春の早慶戦の様子(提供:早稲田大学応援部)

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 早稲田大学応援部が、新型コロナウイルス感染症の影響で活動が制限される中、9月19日に開幕する東京六大学野球の2020秋季リーグ戦などに向け、新しい取り組みを行っている。

昨年、明治神宮野球場で開催された秋の早慶戦での応援の様子(提供:早稲田大学応援部)

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 早稲田大学応援部は1940(昭和15)年に創部し、今年80周年を迎えた。11月28日には「早稲田大学応援部創部80周年記念式典」を予定していたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で来年に延期。応援部現役の活動充実や早稲田応援史の編さんなどを目的にした募金の締め切りも9月末から12月末まで延期となった。

 入学式、卒業式などの大学公式行事、東京六大学野球をはじめとする早稲田スポーツの試合、箱根駅伝の応援など、年間を通じて、さまざまな活動を行っている。NHKの連続ドラマ小説「エール」では、第一応援歌「紺碧(こんぺき)の空」の誕生秘話が描かれ、5月に放送されるとネットでも話題になった。肩を組んで「紺碧の空」を歌う姿は、同大のシンボルの一つとなっている。

 新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で、緊急事態宣言が発令された4月から、応援部も活動を全面的に自粛。入学式も中止になり、新歓活動も例年のように行うことができなかった。当初5月から活動再開予定だったが、7月までキャンパス内に入ることができず、平日は週3日練習をし、週末は応援に出掛けていた例年とは大きく異なる春学期を過ごすことになった。

 そのような状況の中、「一人一人が自分の意見を持ち応援部を続けるために、普段話さない先輩と会話できる機会をつくりたい」との思いから、「考える機会の提供」をコンセプトに、部内向けの情報発信や情報共有を行ってきた。応援部リーダー4年の大久保友博さんは「『考えろ』と言うのは簡単だが、『考える環境をつくること』は難しい。みんなが自然と頭を使えるような環境をつくり出すのが、上に立つ者の使命だと気付いた」と話す。

 東京六大学野球をはじめ、大学生による学生スポーツに対する関心が落ちてきており、明治神宮球場の入場者数に減少傾向が見られるという。大久保さんは「われわれはこの状況を直視しなければならず、ただ思考停止して、応援を続けるだけでは通用しないと思った」と話す。学年をまたいだグループディスカッションや神宮球場の来場者数のデータの共有、集客のためのアイデアをオンラインフォームで募集するなどの活動を行ってきた。普段の練習ができず、9月に予定していた夏季合宿も中止になる中で、応援部の存在意義を考え追求し、確認し合うことができたという。

 対外的な情報発信では、SNSなどのオンラインを活用。東京六大学野球の応援席で配布していた応援のガイドブックを初めてサイトで配布した。応援部リーダー3年の渡辺来夢(れむ)さんは「世間的には新しい日常といわれており、今後はこういう状況だから楽しんでもらえる要素も取り入れていきたい。早稲田スポーツには応援部が本当に必要だと思ってもらえるようなガイドブックを作っていければ」と意気込む。

 大久保さんは「春学期に取り組んできたことに一定の成果を感じている。残り少ない現役生活の中で、これまで考え抜いてきた応援部の存在意義を行動に落とし込んでいきたい。自分だけが取り組むだけでなく、同期や後輩と一緒に応援部としてできることやっていければ」と意気込む。

 新型コロナウイルス感染症の影響で、東京六大学野球の春季リーグは開幕が遅れ、8月10日~18日に開催。観客の数を制限し、全試合で応援部による応援はなかった。早稲田大学は3勝2敗で3位だった。9月7日には、早稲田大学野球部の主将・早川隆久さんと早稲田大学応援部の代表委員主将・宮川隼さんの対談記事を公開。9月19日に開幕する同秋季リーグ優勝の条件について、早川さんが「応援部の存在」と言及した。

 早稲田大学応援部は、今後も応援の可能性を模索していくという。例年、「秋の早慶戦」の週の水曜に行っている「稲穂祭」は初のオンライン開催が決まっている。

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