早稲田大学(新宿区戸塚町1、以下早大)がカーボンニュートラルを目指す「Waseda Carbon Net Zero Challenge 2030s」を11月1日、発表した。
カーボンニュートラルとは「二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量抑制と植林などによる吸収、除去により、排出量と吸収量、除去量を差し引いた合計をゼロにすること」(資源エネルギー庁)。国内では昨年10月に臨時国会で菅義偉前総理大臣が「2050年カーボンニュートラル宣言」を打ち出した。
各分野でカーボンニュートラルへ向けた取り組みが進む中、文部科学省は7月に「カーボンニュートラル達成に貢献する大学等コアリション」の設立を発表。188の国公私立大学、大学共同利用機関、高等専門学校、研究機関などが参加し、「国、自治体、企業、国内外の大学などとの連携強化を通じ、その機能や発信力を高める場」(文部科学省)にするという。
早大が新たに公開した特設サイト「Waseda Carbon Net Zero Challenge」では、田中愛治総長が動画で創設者・大隈重信の建学の精神「一身一家、一国のためのみならず、進んで世界に貢献する抱負がなければならぬ」を引き合いに、カーボンニュートラルに取り組む理由を説明。「カーボンニュートラルを実現する最先端研究」「カーボンニュートラルに貢献する人材育成」「キャンパスのカーボンニュートラル達成」という三位一体の形で実現を目指す。
研究では「カーボンニュートラル文理融合研究の推進」「産官学および国の境界を超えたオープンイノベーションの推進」「研究成果の社会実装と国際連携」の3つを軸に掲げる。10月26日時点で、学内でカーボンニュートラルに関連する研究者が53人在籍し、エネルギー高効率利用や人間社会の改革など総合大学ならではの幅広い分野での専門知を結集できるよう研究体制を整える。
人材育成では、全学生が受講できるカーボンニュートラル副専攻や博士課程を対象にした大学院人材育成プログラムの設置、高校生、社会人も受講できるカーボンニュートラルオープンセミナーの開催を進めることで、「カーボンニュートラル実現において中心的な役割を果たせる人材を輩出していく」(早大)という。
キャンパスのカーボンニュートラル達成は、創立150周年に当たる2032年の目標達成を目指す。現在は年間約4万~5万トンの二酸化炭素を排出している。再生可能エネルギーの利用や建物ごとのエネルギー使用量の可視化、資源循環リサイクルのプロセスの検討などに取り組む予定。
総務部副部長・総務課環境安全担当課長の松尾亜弓さんは「カーボンニュートラルの実現に当たっては、大学だけでは成し得ないことも多く、産官学連携の下、約66万人の校友の英知も結集させて新たな価値を創出していきたい。カーボンニュートラルはSDGsの17のゴールとも密接に関係があり、点だけで考えても解決できず、多面的・多角的に考えていく必要がある。大学の使命とは何かを考え、持続可能な脱炭素社会の実現に貢献するために、今できることは率先して実践し、今実らないことであっても10年後、20年後を見据えて、行動を起こしていくことが重要」と話す。
今後、特設サイト「Waseda Carbon Net Zero Challenge」では成果も発信していく。