素浄瑠璃公演「女流義太夫公演 in エンパク」が7月25日、大隈記念講堂小講堂(新宿区戸塚町1)で開催された。
女流義太夫は、人形浄瑠璃文楽で演奏される音楽・義太夫節を女性の演者が人形を伴わないコンサート形式で演奏する古典芸能で、特に江戸時代後期から明治時代にかけて流行した。
同公演は、江戸時代に活躍した浄瑠璃作者・近松半二に焦点を当てた2022年度春季企画展「近松半二――奇才の浄瑠璃作者」の関連事業。6月には、「素浄瑠璃公演 in エンパク」と題し、六代目豊竹呂太夫さん、鶴澤清介さんによる演奏とアフタートークを開催した。
同展を企画した原田真澄助教は「近松半二展の関連事業として、大阪で発祥発展した人形浄瑠璃文楽の義太夫と、東京でも根付いた女流義太夫による2つの演奏会を開催したかった」と話す。
同館の企画で女流義太夫が披露されるのは46年ぶり。当日は、生涯に60以上の作品を残した近松半二の作品から現在も文楽や歌舞伎で上演される演目の一つで、大化の改新にまつわる政変を題材とする「妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)」から、純粋な少女お三輪の悲恋を中心とする四段目「金殿の段」を四代目竹本綾之助さん(浄瑠璃)と鶴澤寛也さん(三味線)が演奏した。
アフタートークでは、竹本さんと鶴澤さんが、それぞれの入門のきっかけや稽古などでのエピソード、金殿の段の演奏に向けての稽古や苦心した点などを話した。
公演後、原田さんは「金殿の段は、女官やお三輪ら女性が活躍する場面が多く、女流義太夫ならではの聞き応えのある豊かな演奏だった。特に恋のために全てを投げ出すお三輪の繊細な心の動きが余すところなく表現されていた。女流素浄瑠璃になじみがない人は多いと思うが、いろいろな所で上演されているので足を運んでほしい」と話し、「当公演をきっかけに日本の古典芸能、邦楽に興味を持つ人が増えるとうれしい」と期待を寄せる。
企画展は8月7日まで。