早稲田大学(新宿区戸塚町1)が5月5日、「経済的に困窮している学生への緊急支援策について」と題した新しいコメントを公開した。
同大は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により経済的に困窮している学生に対しこれまでに、10万円の「緊急支援金」を支給することを公表し、受け付けを始めている。その他の支援策として「オンライン授業受講に関する支援」「既存の奨学金等の支援」も公表していた。「早稲田大学の学費に関する考え方について」も同日、新たに公開した。
今回新たに「緊急支援金」については、当初予定の3000人から必要な学生数に応じて増やしていくこと、以前からある「家計の急変により経済的に困窮した学生」に給付する「早大緊急奨学金」の受給者を約3倍に拡充する計画があることなどを明らかにした。
「オンライン授業受講に関する支援」については、経済的打撃のない人も含む全ての学生に対し、オンライン授業での通信費の負担を軽減させるため、スマートフォンを安価で購入し、1年間通信費を無料にするサービスの準備を進めおり、「通信事業者とも交渉中」という。
経済的な理由で、自宅でオンライン授業の受講に必要な通信環境やPC環境が準備できない学生のためには、モバイルWi-Fiルーターとパソコンをそれぞれ500台用意し、無償貸与する。「緊急支援金」「早大緊急奨学金」を申請していても貸与が受けられる。契約書類が障害となる留学生にもモバイルWi-Fiルーターを無償貸与できる準備を進める。
これらの支援策について、田中愛治総長は「5万3000人に及ぶ早稲田大学の全学生ではなく、経済的に困窮している学生が対象」であることを改めて強調。その理由について、創立者である大隈重信が掲げた建学の精神の一つ「模範国民の造就」に触れ、「早大生は自己利益だけを考えず、世界の人々のために貢献してもらいたいという願いが込められている」と紹介。
「利他の精神を培うことを期待していた」とし、SDGsの理念『No one will be left behind(一人も取り残さない)』とも共有する考え方で、この2つにのっとり「学生が経済的な理由で学業を諦めて退学しないようにと願い、複数の経済的支援策を決定した」としている。「家計に急激な変化が生じていない学生には、大学が困窮する学生を救うために、早稲田大学が多くの支援策を打ち出すことを温かく見守っていただきたい」とも。
同大では支援の拡大と継続のため、「新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急支援金」への寄付を教職員、卒業生、個人、団体、法人に呼び掛けているが、「かつてないスピードで寄付が集まっている」という。1口1万円で、口数が整数でなくても可。早大の寄付制度「WASEDAサポーターズ倶楽部」を通じ、受け入れを継続する。
田中総長は学生に対し、「総長になってから掲げてきた早稲田の新たな教育目標は、人類にとって未知の問題に挑戦して自分なりの解決策を考え抜く『たくましい知性』と他者への理解を深める『しなやかな感性』を育んでもらうこと。この2つこそ、新型コロナウイルス感染症拡大に対抗できる解決策を導き出すことを支える精神だからである」を伝えたいとした。