早稲田大学が工事中の大隈記念講堂(新宿区戸塚町1)の仮囲いパネルに、同大名誉フェローで洋画家の藪野健さんが描いた早稲田キャンパスなどの風景画が8月1日から展示されている。
早稲田大学を象徴する建造物である同施設は、1927(昭和2)年完工。2006(平成18)年から2007(平成19)年にかけ、老朽化対策・耐震補強大改修の必要性による保存再生工事を行い、その後、重要文化財に指定されている。
新たに大規模天井耐震改修工事を3月下旬から12月末の予定で行っており、「重要文化財の講堂で、大規模天井耐震改修するはじめて事例」(同大企画・建設課)という。工事開始と同時に建物の周囲には、仮囲いパネルが設けられていた。
藪野さんは1969(昭和44)年早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。翌年サン・フェルナンド美術学校(スペイン)プロフェソラード留学。1999(平成11)年早稲田大学芸術学校教授、2010(平成22)年早稲田大学基幹理工学部表現工学科教授などを経て、2014(平成26)年、同大栄誉フェロー、名誉教授に。府中市美術館館長や広島大学名誉博士も務める。澄み渡った青い空は「藪野ブルー」と言われ、藪野さんの作品の特徴となっている。
展示された風景画は全14点。今回の大隈記念講堂の工事の様子を描き下ろした「大隈記念講堂工事用仮囲い壁画」をはじめ、同大の同窓会組織「早稲田大学校友会」が発行するコミュニケーション誌「早稲田学報」で2011(平成23)年から連載中の「記憶の中の早稲田」から6作品、構想はあったものの実現に至らなかった「幻の一万人講堂」や「棟のある幻の恩師記念館」などの作品を展示する。タイトルの「早稲田の時空を歩く」は田中愛治総長の直筆。
同大キャンパス企画部企画・渉外担当課の高橋一城課長は「藪野先生の絵画の拡大フィルムを仮囲いパネルに展示するためにこれまで準備を進めてきた。水彩画の色味や精細さを再現するために何度も試行し、8月3日・4日に開催されたオープンキャンパスに間に合わせることができた」と話す。
「今回の工事中の大隈記念講堂を描いた新作をはじめ、早稲田大学の歴史を伝える貴重な作品も多い。1人でも多くの人に早稲田大学が歩んできた歴史を感じてもらえれば」と呼び掛ける。
展示は大規模天井耐震改修工事の終了まで。