早稲田大学(新宿区戸塚町1)が11月29日、ユニクロなどを展開するファーストリテイリング会長兼社長の柳井正さんから作家の村上春樹さんの寄贈資料などを収める「早稲田大学国際文学館」(通称=村上春樹ライブラリー)の建築費用約12億円の全額が寄付されることを発表した。
同大と村上さんは、昨年11月に「村上春樹氏所蔵資料の寄贈と文学に関する国際的研究センター構想についての記者発表」を行い、50言語以上で刊行された翻訳版を含めた全ての村上さんの小説作品や直筆の原稿、数万枚のレコードコレクションなどを村上さんが寄贈・寄託し、作品のアーカイブと研究の場を作る「村上春樹ライブラリー構想」を発表。さらに今年6月にはその具現化を進める「早稲田大学国際文学館」の設置を発表していた。
「早稲田大学国際文学館」は、「早稲田大学坪内博士記念演劇博物館(通称=エンパク)」の隣にある4号館を改修し、2021年4月にオープンする予定。設計は、建築家で同大特命教授・東京大学教授の隈研吾さんが担う。村上さんが学生時代に通ったというエンパクの近くに、世界中の村上文学、翻訳文学の研究者が集う場所を設ける。
11月28日には、「早稲田大学国際文学館」のオープンに向け、第1回の記念企画として翻訳やアダプテーションをテーマにしたシンポジウム「村上春樹と国際文学」を開催。定員の400人を超える申し込みがあり、学内14号館201教室に同時中継会場を設置するほどの人気を集めた。
今回の寄付は、同大の卒業生でもある柳井さんが、「日本文化の国際発信が非常に重要との考えから『村上春樹ライブラリー』の取り組みを評価し、支援することになった」という。早稲田大学は2020年2月をめどに、村上さん、柳井さん、隈さんと共に記者会見を行い、「村上春樹ライブラリー」の全体像を発表する予定。
同大は村上春樹ライブラリーの運営ならびに各種研究・各種事業等を継続的に展開し、国際的な文学研究を推進するための「村上春樹ライブラリー募金」を10月から行っている。「本学では国際文学の中における村上文学をはじめとする日本文学・翻訳文学の研究を発展させ、国際発信し、国際交流をする画期的な研究センターを構築し、この取り組みを応援してくださる皆さまの厚志に沿いたい」とコメントしている。