早稲田大学近くで、油そば専門店を展開する「麺爺」が8月3日、早稲田店(新宿区早稲田町)、馬場下店(馬場下町)の営業をそれぞれ104日ぶり、114日ぶりに再開した。
「麺爺」は、2011(平成23)年にオープン。500円から提供する「黒(しょうゆ)」「白(塩)」を中心に、店舗により「赤(黒ベース辛みそ)」「紅(白ベース辛みそ)」「茶(みそ)」(以上550円)を用意。追加トッピングを13種類用意したり、期間限定メニューを展開したり、学生サークルとのコラボメニューに取り組んだり、早大生から愛される店として、早稲田大学周辺に4店舗を展開してきた。
新型コロナウイルス感染症拡大を受け、馬場下店、西早稲田店(大久保2)、麺爺ラボ(馬場下町)の3店舗を4月11日から臨時休業に。それまでに着手していた「LINE Pay」の仕組みを利用し、将来のチケットを購入できる「未来ワセメシPay」に加え、代表の石田正徳さんや各店舗の店長が原付バイクで、自宅でゆでる油そばのセット「おうち麺爺」を配達する「配達店長」のサービスを開始。4月21日からは早稲田店も「おうち麺爺」だけの販売にし、店内でのメニュー提供がない状況が続いていた。
4月24日には製粉会社の協力も仰ぎ、冷凍保存が可能な自家製麺の提供を開始。保存期間を約1カ月に延ばすことに成功した。5月2日には「おうち麺爺」の全国配送を開始。当初は「黒(しょうゆ)」だけの提供だったが、客の声を聞きながら「おうち麺爺」の味を毎週追加して10種類まで増やしたり、ツイッター上で「おうち麺爺コンテスト」を開催したり、店舗に食べに来ることができない客とのコミュニケーションを取り続けてきた。
石田さんは「『配達店長』では当店のスタッフが直接お客さまにお届けすることにこだわった。お礼を言っていただいたり、差し入れをいただいたり、ねぎらいの言葉をいただいたり、大勢のお客さまに優しく接していただき、とても励まされた」と話す。毎日100キロを超える距離を移動し、延べ1.5万キロに迫る走行距離という。新しい取り組みで対応を続けてきたが、5月22日には西早稲田店の閉店をツイッターで発表。2019のリツイート、3713のいいねがあり、早大生や卒業生から残念がる声が上がっていた。
「早大生と共にこれまで歩んできた」と話す石田さん。店舗営業の再開は、早大生の課外活動が制限付きながら、多くのサークルが利用する施設「学生会館」の利用再開などをめどに検討してきた。多くの早大生でにぎわっていた店内の3密対策や提供するメニューなどを決めるのに苦労したという。
当面、限定メニュー「麺爺の油そば」(750円)のみ提供する「特別メニュー営業」になる。「黒」「白」「赤」「紅」「茶」5種類の味を用意、麺は並か大盛りを選べ、具は2.5倍にする。メニューを絞ることで提供スピードを早め、混雑緩和を目指す。当初は1店舗だけの再開を予定していたが、近隣2店舗を再開することで客を分散させ、密な状況を回避したい狙いも。食事中以外のマスク着用のお願い、待ち位置の掲示、座席数の減少、店内換気、移動可能な飛沫(ひまつ)防止シートなどの対策を行う。
早稲田店には、営業開始後約10分に最初の客が来店。健康診断で大学を訪れた早大生で「麺爺に来るのは秋学期の試験が終わった1月末以来、半年ぶり。健康診断で健康な状態だと分かり、油そばが食べたくなって来た。味が濃く、ちぢれ麺なのが好み。これからも店を続けてもらいたい」と話す。学生会館の横にある馬場下店に来店した早大生は「12時から学生会館で用事があるので、それまでに食べようと思って来た。久々に食べることができてうれしい」と話す。お昼頃には久々の麺爺を楽しむため、若者を中心に多くの客が来店した。
石田さんは「新型コロナの影響で経験したことのない状況が続き、スタッフの協力やお客さまの励ましでなんとかここまでやってきた。後悔したくないという気持ちで、対応できることには全て取り組んできた。今日、営業を再開して、多くのお客さんに来ていただけたことが本当にうれしい。引き続き、多くのお客さんに喜んでもらえる店にしていきたい」と意気込む。
当面の営業時間は11時~19時(土曜は15時まで)。日曜定休。