西早稲田のカレー専門店「ダルシムカリー」が11月30日、閉店した。
西早稲田のカレー専門店「ダルシムカリー」の「マッドハンドカリー」
「ダルシムカリー」は、油そば専門店「武蔵野アブラ学会」を運営するギガデイン(新宿区西早稲田1)のカレー専門店。共同代表の木村考宏さんは、高校生の頃からスパイスカレーが大好きで、いつかはカレー専門店を開きたいと考えていた。長年「ワセメシ」の人気店だった「エルム」が閉店し、「このタイミングしかない」と、その跡地に2016(平成28)年に開いた。
メニューのコンセプトは「日本人がご飯と食べたいカレーをつくる」。インドカレーをベースにしながらも、独自の調理方法を考案、20種類のスパイスを使う。「肉はジューシーな状態で食べてほしい」という思いから、豚バラやチキンは煮込んだものではなく鉄板で焼いて提供してきた。オペレーションやトッピングを16種類用意するなど、油そば専門店を運営しているノウハウも生かしてきた。
主なメニューは「鉄板豚バラカリー」「チキンカリー」「チキンオーバーライス」の3種類。「チキンオーバーライス」はニューヨークで流行していた屋台飯。カレーは8段階の辛さ、7段階のご飯の量を用意していた。共同代表の角幡陽平さんは「スープも素材にこだわり、試行錯誤する中で牛すじを入れることにした。その結果、インド人が食べることができない本格派インドカレーになってしまった」と振り返る。
「怪しいインド人のテイストを出しつつスパイスカレーを楽しんでもらいたい」と考えていた角幡さん。店内もインドの世界観とストリート感を出そうと、「妄想インド」を追求した内装にした。
早大生だけではなく遠方から熱心なカレーファンが来店することも多かった。横濱カレーミュージアムの初代館長・小野員裕さん、「初めての東京スパイスカレーガイド」の著者として知られるカレー研究家のスパイシー丸山さん、オリジナルスパイスセットの開発・販売をする印度カリー子さんなどの著名人の来店も相次いだ。角幡さんは「カレー好きの方々に評価していただけたのは本当にありがたいこと」と話す。
早大生のサークルとコラボメニューにも取り組んできた。2017(平成29)年には早稲田大学広告研究会とコラボした「マッドハンドカリー」を発表。煮込んだチキンの足を手に見立て、「ドラゴンクエスト」のモンスター「マドハンド」を連想させる盛り付けにした。木村さんは「見た目が不気味過ぎたのと、今の学生さんにはドラクエネタが伝わらず、おいしいのに売れなかった」と笑う。「本庄~早稲田100キロハイク」との定番コラボ「100辛」や、今年の早稲田祭の企画「早稲田王決定戦」とのコラボで「早稲田キング海老(えび)カリー」を提供した。
今回の閉店は「ダルシムカリー」のマンションの共有設備のダクト設備の不具合によるもの。マンション管理組合と交渉を続けてきたが、改善に至らずやむを得ず閉店を決断した。店内独特の匂いが服に染み付いてしまうことも特徴の一つだった。「近隣の方や来店者にご迷惑をおかけしてしまったのは事実で、反省している。臭かったのにもかかわらず、多くのお客さまに来店いただき本当に感謝している」と話す。
11月16日に閉店を発表すると、連日店の前には閉店を惜しむ客が行列を作った。最終営業日には長いときで2時間待ちの状況も。想像以上の来店による在庫切れで、閉店時刻よりも早く店を閉めた。
今後、場所を変え「ダルシムカリー」の再オープンを計画しているという。「ダルシムカリー」がツイッターで閉店と復活を目指す旨を発表すると、「美味しかったからぜひ再開してほしい」「これはショック…しかしまた必ず復活するとの事。僕らのダルシムカレーは死なない!」「『残念』と諦めずに『次』を待ちましょう。学生ダルシムファンも、一般ダルシムファンも、ただカレーやワセメシのファンな俺たち食いしん坊も」(以上、原文ママ)と、閉店を惜しむとともに復活を期待する声が多数寄せられた。
木村さんは「ダルシムカリーは必ず復活する。帰ってくる以上は2倍も3倍もパワーアップするつもり。インド料理のビリヤニや自家製コーラをメニューとして出すなどやり残したことはたくさんある。早稲田のダルシムでは設備の関係上でできなかったことを新店舗で実現する。どうか復活するダルシムを楽しみにしていてほしい」と呼び掛ける。
現在、テレビ朝日主催の「激辛グルメ祭り」のECサイトで冷凍した「ダルシムカリー」を購入できるほか、「ダルシムカリー」のスパイスが購入できるECサイトも準備している。