早稲田大学のバンドサークル「ARTOFFICE」が、「バンドサークルコラボMV企画『×ART』」で他のバンドサークルとコラボしたミュージックビデオを4月1日から公開を始め、21日に最後となる6本目を公開した。

「東京事変『キラーチューン』 covered by ALLWAYS×ARTOFFICE」のスチール画像

　「ARTOFFICE」は1986（昭和61）年設立のオールジャンルのバンドサークル。インカレで100人超が所属している。例年は都内ライブハウスなどでほぼ毎月ライブを行ってきたが、昨年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、サークルの活動が大幅に制限されることになった。

　昨年4月には新歓活動や「早稲田12大バンドサークル合同ライブ2020」などが中止に。「ARTOFFICE」はオフラインでの活動再開の可能性を模索していたため、オンラインでの新歓活動も出遅れることになった。昨年度のイベントは例年の1～2割程度となり、ライブハウスのキャンセルが相次ぎ「キャンセル料は30万円近くに上った」という。

　昨年8月にはサークル活動が再開。早稲田祭でのライブや1年生が参加できる11月ライブ、12月ライブなどを行ってきた。「ARTOFFICE」の野口麦さんは「例年の12月ライブは15～20組程が出演している。しかし昨年は10組程度となり、数の少なさに衝撃を受けた」と話す。メンバーは、他のサークルとの掛け持ちも多く、ライブができないことで「ARTOFFICE」での活動量が減ってしまった。

　「例年通りの活動では、サークルの存続すら危うくなると思った」（野口さん）ことから、今年の新歓に向けて新しい取り組みを行うことに。他のバンドサークルも多くが「ARTOFFICE」と同じような状況に直面していたことから「新入生を取り合うのではなく、バンドサークルに興味を持ってくれる新入生の母数を増やせば、各サークルの入会も多くなるのではないか」との仮説を立て、他のバンドサークルとコラボを行うことにした。

　コラボ企画はオンラインライブも候補にあがったが、すでに事例が多く、別の企画を検討することに。オンラインライブとの差別化、音源のクオリティーを追求するために、ミュージックビデオを制作することに決めた。各サークルの強みや良さが出せ、ある程度知名度のある曲を選び、それぞれの曲に適したボーカル、演奏者を募集し、準備を進めてきた。

　事前にスタジオなどで録音し、楽曲のクオリティーを確保。3月21日まで延長された前回の緊急事態宣言中は一人ずつ撮影を行い、編集でつなぎあわせた。宣言解除後はボーカル、演奏者を同じ空間で撮影した。そのため、大きく分けると2種類の動画が混在する。どのミュージックビデオも1カ月程度の制作時間をかけているという。

　参加したサークルは「オリジナルソング研究会ALLWAYS」「東大FGA」「Groove」「New Music Club」「Music Fan Club」「音楽サークル星空」「シャンソン研究会」。東京大学、慶応大学のサークルも参加した。楽曲は「キラーチューン」（東京事変）、「夜に駆ける」（YOASOBI）、「ブルーベリーナイツ」（マカロニえんぴつ）、「丸の内サディスティック Acoustic ver.」（椎名林檎）、「明るい未来」（never young beach）、「Perm」（Bruno Mars）。いずれも「ARTOFFICE」と他のサークルのメンバーが出演する。

　野口さんは「新歓企画ではあったが、一緒に音楽をやっている現役生に向け、「希望を失わないでほしい」と発信しているところもあった。僕たちの在学中にバンドサークルの日常が戻ることはないかもしれない。それでも僕らは音楽をやめない。それは一番つらい時に支えてくれた音楽を続けていきたいと思っているから。今後も工夫して様々な活動に取り組んでいきたい。ぜひミュージックビデオをご覧いただければ」と呼び掛ける。

　「バンドサークルコラボMV企画『×ART』」のミュージックビデオはユーチューブで公開している。